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日保連、社団外の団体として意見主張~鍼灸柔整新聞第1064号より

明細書を施術ごと、出張専門の往療料認めない等


昨年12月27日、第17回あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討委員会が都内で開かれた。今回、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会(日保連、組合員7600人)の理事長・吉田孝雄氏が参考人として呼ばれ、社団を中心とする業界側委員以外の「業界内の考え」が初めて述べられた。日保連の意見に対し、業界側委員が反対し、保険者側委員が理解を示すといった場面がみられた。
日保連が今回挙げたのは、昨年11月20日の前回会議で厚労省が提案した「あはき療養費の不正対策案」への意見で、「一部負担金明細書」、往療に関する見直しなど複数にわたる。
一部負担金明細書を「毎回」交付するとの日保連の意見には、日本鍼灸師会理事の中村聡氏が「領収書を毎回出せば事足りる。また、往療ではショートステイなどで一日に複数患者を治療するが、患者の都合でその日の件数が減り、往療料が急に変わることもあり、その都度、明細書を出すのは難しい」と懸念を示した。全日本鍼灸マッサージ師会副会長の往田和章氏も「私の場合、捺印をしてもらっていることから月末に患者本人に申請書を確認してもらっている。毎回の明細書交付は施術者負担が増すだけで、架空請求の防止に直接つながらない」と、明細書等を「月ごと」に交付する厚労省案を支持した。それに対し、健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏は「申請書に毎回署名することが一番の不正対策であるとの考えは変えないが、署名が難しい高齢者も増えている現状では、日保連の考えは検討の余地がある」と理解を示した。吉田氏は「施術内容や往療距離などが毎回一定とは限らず、正確を期すためにも毎回交付の必要性を感じる。公費を使う以上、施術者もそれぐらいしないといけない。厚労省案より一歩進んだ提案だ」と述べた。

業界外部に「出張専門は魅力ない」状況作れ


往療については、日保連は「出張専門の施術者には原則として往療料の算定を認めない」との意見を挙げ、その理由を「施術所を持たない往療専門の一部の業者が、営利のみを目的に施術者の影に潜んで、実質的に経営者たる別の者が実権を握っている実態がある」としている。議論の中でも、吉田氏は「免許取りたての施術者を雇い入れ、一日中往療治療に連れ回して鬱病になったとか、経営基盤が不安定な業者で賃金の不払いも起こっているとも聞く」と述べ、業界外部から「出張専門をやっても魅力がない」という状況を作らなければならないと主張した。この発言を受け、保険者側委員から「事実ならめちゃくちゃな話だ。往療の見直しは抜本的に行わないといけない」と厚労省に問いただした。業界側委員からは「吉田氏の発言はいくつかの問題を混同している。いわゆる請求代行業者と呼ばれる業者が患者を集め、その患者を出張専門の施術者に委託の形で依頼しているケースが問題で、この点は何かしら制限をかける必要があると以前より主張している。ただ、最近はこれら請求代行業者も減り、単に出張専門の往療料を認めないとの一点だけで不正が解決するとは思えない」と指摘する声も聞かれた。

あはき専門委員会で同意書様式を議論
保険者・医師「詳細化が必要。診察日も」
あはき業界「同意書は指示書ではない」


昨年12月27日の第17回あはき療養費検討委員会では、保険者側から「同意書の詳細化」を求める意見が出された。宮崎県後期高齢者医療広域連合が同県下で使用している同意書様式が資料として提示され、提出者である東京都後期高齢者医療広域連合保険部保険課長の後藤邦正氏が、「現行通知で示されている様式では、症状の程度について記載する欄が無く、同意書のみで施術の必要性を判断するのが困難」と述べ、医師による医学的所見や症状、経緯などの欄を設けている宮崎県の例を取り入れるよう要望した。
これについては、有識者委員の医師らが賛成の意を表し、「まず、施術によって状態の改善が期待できるかどうかを医学的に判断するのが医師の役目だろう。同意書の詳細化で医師に負担がかかることも懸念されるが、同意書を書くという責任が医師にもあるので、これで『仕事量が増えていかん』ということにはならない」(釜萢敏氏・日本医師会常任理事)、「(宮崎県の例は)非常に素晴らしい。介護保険制度が始まった10年前を思い出した。できれば全国で使ってほしい」(清水惠一郎氏・日本臨床内科医会常任理事)といった発言があった。他の保険者側委員からも「同意書を書く医師から取り入れた方がよいとの意見をもらったので、誰も否定するものではない」、「この例に追加して、診察日の欄も設けてほしい」との意見が聞かれた。
一方、業界側からは、往田和章氏(全日本鍼灸マッサージ師会副会長)が、「そもそも同意は、施術そのものへの同意ではなく、療養費の支給を受けることに対する同意であり、訪問看護の指示書とも異なり、同意書は患者に交付されているものだ。しかも、医師と共謀する施術者に対しては、同意書を詳細化しても対応できない。抜本的な不正対策は、医師に対し、同意書を書く意義や施術の必要性について理解の浸透を図っていくことと、受領委任の導入に当たって施術者更新制を導入することだ」と反論した。
今回の専門委員会は、1時間30分という当初予定していた時間を大きく超え、2時間近く議論が続けられた。次回開催は未定。

【日保連の主な意見】
・施術ごとに患者署名をもらうことと支給申請書の写しを毎月患者に交付することは必要無い。ただ、「一部負担金明細書」は厚労省提案通り患者へ交付する必要性があり、毎回交付とするのがよい
・同意・再同意について、「施術報告書」を厚労省提案通り医師に添付する場合は6カ月ごとの再同意とするのがよい
・「受領委任から償還払いに戻せる仕組み」については、罰則規定の導入等により対応を図るべきで、反対
・「往療内訳表」の導入は厚労省提案通りでよい。往療料については、施術所を持たない「出張専門」の施術者には原則として算定を認めないとするのがよい


鍼灸柔整新聞 第1064号 2018年1月10日号より転載

 

掲載日/最終更新日 : 2018年1月16日(火)

 

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