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審査請求のケーススタディー

健康保険組合が柔道整復療養費の支給を認めなかった場合、被保険者に「不支給決定通知書」が交付される。そうなると、施術をした柔整師は7割分を患者に支払ってもらうことになるが、患者が「自費で支払うのは納得できない」と主張すれば、審査請求をすることができる。審査請求権は被保険者にあり、柔整師は請求人になれない。これは、「柔整師は単に保険給付金の受け取りに関して被保険者から委任を受けた者であり、処分決定を受けたのはあくまでも被保険者・加入者である」という考えに基づく。しかし、患者からの依頼があれば、治療を担当した柔整師が代理人となって審査請求ができる。そこで、審査請求の具体的な流れを説明する。

 まず、健保組合を管轄する地方厚生局の社会保険審査官に連絡すれば審査請求書を送ってもらえる。これに必要事項を記入し、保険者から届いた不支給決定通知書のコピーなどを添付して提出するだけで、健保組合の決定の適否を審理してもらえる。審査請求書の「審査請求の趣旨及び理由」で述べた反論が認められれば保険者が決定した不支給が取り消される。費用はかからないが、不支給決定を被保険者が知った日の翌日から60日以内に請求しなければならないという時間制限がある。

 さて、不支給の理由として最も多いのは、「療養費の支給要件を満たしていないため」とか「急性又は亜急性の外傷性のケガとは認められないため」である。しかし、施術者は実際に患者の身体に触れ治療を行った立場から、患者は実際に治療を受けた経験から、それぞれ、単に書面審査しかしていない保険者よりも多くの情報を有しているはずだ。それらの情報をきちんと整理して、不支給理由に対して反論する必要がある。例えば、▽患者から聞き取った負傷原因の詳細、▽急性又は亜急性の外傷性の負傷であることの物理的な説明、▽患者に行った各種検査の名称と結果、▽患者が受けた外力や負傷の発生機序、▽実際に行った手技療法、物理療法などの治療行為の具体的説明とその効果――など。これらを詳細に記載して、療養費支給要件を満たしていること、急性又は亜急性の外傷性のケガであることを立証するのである。

 一方、不支給処分を決定した保険者も、患者照会で患者の回答を得ていたり、不支給が妥当と判断した根拠を有していたりする。審査請求では、必要に応じて患者本人が作成した「申立書」を提出して不利な状況を打ち消しておくことも有効である。

 不支給処分された施術が、真に療養費として支給されるべき施術であれば、審査請求という手段があることを知っておいてほしい。

鍼灸柔整新聞平成24年2月10日「医療は国民のために98」より転載

 

掲載日/最終更新日 : 2012年2月15日(水)

 

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