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社会保障審議会の議論を傍聴して

3月26日に開催された社会保障審議会医療保険部会に置かれる「柔道整復療養費検討専門委員会」と「あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会」を傍聴した。今回は施術者の意見を反映するとして、それぞれの業界団体から資料が提出された。
 まずは柔整について。事務局案が新たな負傷部位ごとの経過や頻回施術の理由を記載した文書を支給申請書に添付するよう義務づけるのであれば、再検料も毎回算定できるようにすべきだという業界側の意見は的を射ており評価できる。一方、負傷原因を1部位からすべて記載させることや申請書に施術録添付を求めるという、業界にとってマイナスの意見も目立った。また、支払い側の保険者からは、柔整療養費を総枠でなんとか抑制したいとの発想が見て取れた。公益の立場で出席した整形外科医からは「亜急性の外傷というのはおかしい。そんな日本語はない。亜急性期と明記すべき」という発言もあった。これはまさに柔整療養費の支給対象の根幹に触れる指摘であるが、そもそも柔整療養費の在り方に関する議論を、この検討専門委員会で取り上げていいのかどうかが疑問である。業界としても抜本的な改正を政府に求めるのであれば、業界自らが抜本改定案を示すべきであり、何でもかんでも国に丸投げでは説得力がない。検討専門委員会では次期療養費の改定を議論する場であり、療養費の在り方を議論するのは親部会である医療保険部会がその任にあたるのではと考える。
 次にあん摩マッサージ指圧、はり・きゅうについて。業界団体の主張する「一部負担金だけで鍼灸マッサージ治療が受けられる制度にしてほしい」とは、いわゆる受領委任取扱いを認めてほしいということであり、適切な要望だ。あはきの委員会では、もっぱら「往療料」に議論が集中した。業界からは、現行の「定期的・計画的なものは認められない」という運用に触れ、介護分野ではむしろ定期的・計画的な対応が求められているとの変更を要望する意見が出された。その中で事務局案は往療料1,860円→1,800円と大幅な引き下げを提示した。保険者側からは、やむを得ない場合に算定されるのが基本ルールであるにもかかわらず、マッサージでは療養費のうち往療料が6割に達しているのは問題だとして、さらなる適正化の必要性を問う議論がなされた。
 そんな中、両委員会とも厚労省保険局が示した事務局案に対し、議論すべき点は「適正化のための運用の見直し」であり、その各事項の具体的な取り扱いであったはずだ。なぜ、業界側から質問が出なかったのか疑問でならない。単価の増減などは瑣末な問題で、適正化への運用の見直しが最大のポイントであることに気付いていないのだろうか。事務局案に対し、業界団体はおおむね受け入れた一方で、支払い側はあくまで療養費の引き下げにこだわり了承できない旨を示した。3月29日の厚労省の発表により、結果的に事務局案どおりの内容で5月1日の施行が決定したが、今後も療養費改定にかかわる動きには注視したい。

鍼灸柔整新聞 2013年4月10日 第950号  医療は国民のために(126) 上田孝之 より転載

 

掲載日/最終更新日 : 2013年4月16日(火)

 

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