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なぜ、完全マルメ料金はダメなのか

  柔道整復療養費の“マルメ”、すなわち“包括化”は、多部位または長期施術に逓減制が導入された平成4年から既に始まっている。現在の4部位以上が支給されないとか、3部位目が30%カットされるのは、このときに実施されたマルメが強化された結果である。最近、柔整師の皆さんが議論しているマルメとは、1日に何部位施術しても料金が画一化された「完全定額料金制」のことだと考える。例えば、捻挫や打撲の負傷名にかかわりなく、かつ、どこを治療したかにかかわらず、1日につき1,300円などと決められることを指すのであろう。療養費給付の適正化の観点から保険者がこれを望むのは理解できるが、完全マルメを希望する柔整師もいる。多部位請求や部位ころがしなどの批判を回避できるとか、また、3部位請求に具体的な負傷原因を書かなければならないことなども、その理由であろう。
  協会けんぽや健保連は、平成24年3月13日付で厚生労働省保険局長に提出した書面『平成24年度療養費改定に当たっての意見』の中で、「算定部位の単位を躯幹および左右上下肢の5部位とされたい」などと、昭和33年に決められたあん摩マッサージの5局所単位の考え方を持ち出し、柔整も5局所単位で包括するマルメを求めている。しかし、私はマルメには反対だ。なぜなら、マルメは必ず「医師の同意の義務付け」に直結するからである。現行では骨折・脱臼の施術については医師の同意が必要だが、打撲、捻挫、挫傷については柔整師の見立てで施術ができ、医師の同意は不要である。マルメが導入されると、現行の算定基準で定められている近接部位などの判断が不要になる。そうなると、柔整師は“具体的な医学的判断を要さずに施術を行う”とみなされてしまう。現在は算定基準で施術部位が複雑、かつ詳細に決められているので、柔整師の判断(診断と置き換えてもいいが)において医科学的見地から施術部位を特定している。それが、5局所単位とか体全部を一つにマルメられてしまうと、施術者は施術部位の具体的な判断を何ら行っていないという理屈を許すことになる。その結果として、「柔整師は施術の際に医科学的見地から判断をしていないのだから医師の同意を得る必要がある」という事態を招く恐れがある。これは決して許してはならないことだ。療養費の支給申請に際して、医師の同意が支給要件に加えられれば、支給申請の件数自体が激減することは安易に想像できる。完全にマルメ化は施術に係る医師の同意の義務化とセットになると私は危惧している。業界の方たちには、この点を慎重に考えていただきたい。

  

鍼灸柔整新聞 2012年(平成24年)7月10日 「医療は国民のために 108 」より抜粋

 

掲載日/最終更新日 : 2012年7月19日(木)

 

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